音のある場所

今日もお疲れちゃん

I sing for...



終わってしまうモノを、とやかく理由をつけて見届けないと言う人たちがいる。

生き物の死ではないから、生き残るモノにしか興味がないと言われても仕方がないのかも知れない。

でも、それでも。

最後の時に、誰も看取る人がいなかったら寂しいよ。

どんな形でも最後は花を添えて見届けたい。

二択しか選べないのなら俺は、最後まで見届けれられる人でいたい。

時間や絆の深さなど関係なしに、自分の人生に少しでも触れていたのなら。

 

 

 

 

2018年7月17日

家のPCが壊れて、ネカフェでCDの取り込みをしていた。

Twitterのタイムラインを眺めていたら、友達が暇してそうで声をかけた。

今日ライブ行くんだよね、と返ってきて、どこの?と聞くと立川だった。

何のライブを観るのかも知らずに、俺は2時間かけて立川BABELまで足を運んだ。

友達が1人で観に来てるライブならハズレがないだろう、って結構軽いノリ。

行く途中で、別の友達から連絡が来る。

ホントはそれを観る予定だったけど、急遽観れなくなったと。

代わりに楽しんできてと言われ、そうなのかーと期待が高まった。

そしてこの場所のライブハウスが、また巡り合わせなのか少しだけ今に繋がってくる。

 

立川に着いて、はじめてのライブハウスに足を踏み入れる。

ライブによく行くようになったけど、まだまだ大御所バンドばかりを聴いていたから新鮮だった。

とりあえず、バーカウンターで安定のBeerを頼んでホールに行く。

入るともう音楽は始まっていた。

ガールズバンドだったけど、エグいほどのシャウトと重低音。

花冷え。というバンドで、すげえ、地下にはまだまだロックが生きてるなぁなんて玄人ぶった思考が浮かんだ。

ホールの端の方に誘ってくれた友達がいて、話しかけた。

今日の目当ては何ていうバンドなの?と聞いたときに、答えてくれたけどなんて言ってるのかわからなかった。

まあ、いいか。と思ってトリである彼らの出番を待った。

 

彼らが出てきて、ライブが始まる。

激しいサウンドに、ボーカルのシャウトが上乗せされて圧倒された。

なんだ、この人達。

かっこいい。

初めて観て聴いたけど、そう思った。

シャウトは止まることなく続いて、素直に凄すぎると思っていたら、

観客たちもノッている。

チラッとみたら、デトロイト・メタル・シティに出てくる女レーベル社長みたいな格好したおばさんがいて、タバコを吸いながらそのライブを観ていた。

レーベルの人なのかなぁ、とか知識も全然ないのに俺は勘違いしてた。

一見堅物そうなその人が、段々とノリが良くなってきたときにこれが音楽の力なんだなと思わされた。

 

ライブは終盤になってMCで、自分のために歌う、的なことを話したあとにとある曲をやった。

最初のイントロが綺麗で、これは…?と食い気味に聴いた。

MCで吐き出すように自分のことを語っていた。

 

どこか冷めた目で自分を見ている

  

ライブが終わったあと、友達が彼らと話したがっていた。

物販もたくさん置いてあるし、俺も気になってたから少しだけ声をかけた。

そこで俺はEmpty daysというミニアルバムと、無料音源配布をしてるという「I sing for myself」と書かれたCDを貰った。

友達が来たがってたので、無料配布音源のCDを1枚多く貰っていいですか?と聞いたらもう2枚くれた。

太っ腹だ。

 

ライブハウスでCDを買って持ち帰るあのワクワク感は一体なんだろうね。

早く聴きたくて仕方がない。

電車に乗っても、ジャケットだけをじっと見つめてるだけ。

Soldier Who Fights Against Painと書かれていて長いバンド名だな〜と思いながら、学生の頃に好きでやり込んだメタルギアソリッドというゲームを思い出した。

ミニアルバムの帯には、喰らえ!という文字だけ書いてあった。

Pay money To my PainのPABLOさんの名がそこにはあった。

どうやらこのアルバムに携わっていたらしい。

すげえ!こんな偶然あるんだ!、と少し心が踊った。

一緒に見てた友達と出会えたのもPTPがきっかけ。

ライブハウスへ行くようになったのも、PTPがきっかけ。

知った時にはもう、ライブは見れなかったからだ。

音楽は聞けるのに。

Kさんの声は聴こえるのに、もういない。

そんな悲しみを味わったときに、今好きなバンドのライブは見ておきたいと強く思った。

だから、SWFAPに出会えたのも偶然かもしれないけど、PTPを知った時からそれは必然の出会いになっていたと思うんだ。

 

少しだけ月日が流れて、10月。

初台wallでSTANDZのライブを観た。

7月にSWFAPを一緒に観た友達と、無料音源配布のCDを渡した友達の3人で。

その時に、STANDZのVo.Kazuyaさんと話していて、SWFAPの話が出た。

昔からのバンド仲間であり、コラボアイテムとしてお互いのバンド名が入ったバンダナを物販で展開していた。

そのときはそんな旧知の仲だとは知らなかったし、かっこいいなと思ったバンド同士がそういう仲だと知れて嬉しかった。

 

その後、Twitterで彼らのバンドをフォローして次のライブはいつかなーまた観たいなーと思いながら日々が過ぎた。

そして10月後半。

毎日働いてる渋谷の喧騒から離れ、鳥取にいた。

免許合宿で一人で乗り込んだ土地は心細くて、鳥取に行く前にKazuyaさんから借りたCDの音楽をずっと聴いてた。

PRAISEのNEXTAGE、Minority GameのThe time doesn’t wait、LARK LINEのthe last drop、今まで知りもしなかった地下で息をしているバンドたち。

他にもたくさんあった。

もちろん、STANDZとSWFAPもだ。

そして、11月1日。

いつものように教習所の食堂で昼飯を食べる。

食堂の隅っこにはテレビが置いてあって、昼のニュースは渋谷のハロウィンで持ちきり。

渋谷で働いているからこんな騒ぎになるのを見越して、鳥取に逃げた。

うわーやべー、お店の後輩たち大丈夫かな〜って呑気に思いがならTwitterを眺めていた。

そしたら31日にライブをしたSWFAPの写真が上がっていた。

俺が大好きだったゲームのメタルギアソリッドのコスプレをしていた。

なんだ、俺の思ったイメージ間違ってねえじゃん(笑)

たったそれだけの出来事だけど、より一層このバンドをまた観たくなった。

 

無事に渋谷に戻ってきた俺は、STANDZのスタッフになった。

ライブの楽しみ方が増えた。

12月、SWFAPのライブを2回観ることができた。

5人体制になっていて、初めて聴いた時の衝撃を軽く超えた。

さながら、壮大な映画を観ているようだった。

来年、この人たちは羽ばたいて行くのだろうな〜とライブを観ながら思ったんだ。

そして、年末。

解散するかもしれない、って話を聞いた。

 

それを初めて聞いたとき、こんなことってあるんだ。と思ったよ。

直接彼らから聞いたわけでもないし、どういう経緯でそこに至ったのかも真実はわからない。

けど、年が明けてSTANDZに解散ライブに出てくれないかと声がかかった。

話は現実となって目の前に現れた。

 

1月のSWFAPのライブは新宿と渋谷の2本観に行った。

けど、なんの因果か分からないけれど、新宿でライブをやったあの日。

SWFAPのCDをあげた友達のバンドが同じ日の初台でライブをやった。

そっちを観に行ってから新宿に行くとちょうどボーカルのシャウトが途絶えた。

ライブが終わってしまった。

悔しいんだけど、しょうがない、仕方ない。

物販でボーカルのFumiyaさんと挨拶をして、STANDZと最初期にコラボしたバンダナを買った。

16日お願いします、と頭を下げられた。

あの場面で、俺はどういう顔をすればいいのかわからなかった。

 

2019年1月31日。

重大告知ありと称してあったライブが渋谷THE GAMEで始まった。

今日に向けて公開されていたプロモーション動画がとてもかっこよかった。

バックで流れているのは俺が手にした配布CDの曲。

綺麗な旋律から始まるあの曲。

たった数分の短い動画なのにとてもワクワクして見てしまう。

けれど、現実は酷で解散という2文字が常に頭をよぎっていた。

今日のライブはまだどんな告知内容か知らずに、それを楽しみにしてる人達がたくさん来ていた。

きっと、みんなワクワクとドキドキだったと思う。

何人かの人は事実を知っていたけど。

いつものように、かっこいいライブを彼らはしてて、やっぱり生でライブを観れるのは幸せなことだなぁなんて思ってた。

 

MCで告知をした。

3月16日にここでライブをします。

来てください。

 

解散のことはライブでは言わなかった。

その事実を知ってる人達はこの告知を聞いて、今言わないのか…とどこかぎこちなく見えた。

けど、そうじゃない人達にはそれだけ?と思ったんだろう。

重大告知としては不自然なライブ告知。

けど、その違和感をいつもの通りのSWFAPが音楽でその時を支配する。

新曲、PROMISEと名づけられた音楽が始まって、また1つこの世に想いが込められた音楽が生み出されたと感じた。

言葉とシャウトと、音が大きくて耳が騒がしいはずなのにどこかスっと心に入ってくる。

俺にはどんな気持ちで歌ってるのか分からないけれど、感情のこもってない無機質な歌なんかじゃなくて、心の叫びなんだろうなって思ったんだ。

この音楽という世界に魅入られて、そこで生きてきた人達なんだなと思ったんだ。

 

「アンコールをやるつもりなかったけど、1曲だけ。

シネマティックハードコア、俺たちという1個の映画を見てください。」

 

あぁ、そっか。

そのとき初めて自分がこのバンドの何に惹かれたのか繋がった。

昔から映画が好きで、そこで流れる音楽も好きだった。

今でも映画館は異世界への入口だと思ってる。

ライブハウスも同じだ。

分厚いドアを開けて、足を踏み入れたそのときから、ここは普段住んでる世界とは別なんだと。

 

まさにそれを体現してくれるバンドがこのSWFAPだった。

 

アンコールでやった曲は

I sing for myself

直訳は、自分のために歌う

そんな、自分のために歌う音楽が、少なくともあの日見に来ていた人達の心にはストンと入っていったと思う。

たった1曲、その1曲が誰かの心を掴むことはできるんだ。

 

帰りの電車で、KazuyaさんとやっぱりSWFAPはかっこいいですよね。と話していたら、

Twitterで解散のお知らせ。

3月16日に向けてのカウントダウンが始まった。

 

最後まで立ち続けることは難しい。

そこに居なきゃいけない人たちがいる。

居て欲しい人たちがいる。

けれど、道はたくさんあって色んな道を歩いていく。

道1本で勝負する生き方と、違う道を歩いたりして最後まで立っている生き方。

どちらも素晴らしい。

 

人は強欲な生き物だ。

俺は大好きなPTPを見れなかった。

だから、今好きなバンドのライブはできるだけ見ようと思っている。

だから、SWFAPのライブをこの目で見れたことはとても幸せなことだ。

けれど欲が出て、もっと見たい、もっと聴きたいと思っている。

後悔するのが嫌でライブハウスに行ってるのに、今はもっとたくさん見たかったと後悔してる。

1回でも見れたことを本当は感謝するべきなのにね。

 

明日の2019年3月16日でSWFAPは止まってしまう。

悔いは残るけど、明日だけは悔いを残さないようにしっかりとこの目でこの耳で楽しむ。

 

そして、彼らの音楽はこの時代にしっかりと残るんだ。

生きた証明。


[Soldier who fights against Pain "PROMISE" - YouTube

 


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この青いバンダナに誓って、STANDZとともにSoldier who fights against Painにしっかり引導を渡しに行く。

少しでも自分の人生に、心に届いたのならライブに足を運んで見届けて欲しい。

聴いたことなくても、聴いた時にライブに行けばよかったと思うあのどうしようもない気持ち。

知るも地獄、知らぬも地獄。

痛みを乗り越えた先に音楽がある。

この曲のCDを配った初日のライブが、俺が初めてライブを見た日だったと、この間知った。

 


I SING FOR MYSELF by Soldier who fights against Pain on Spotify

 

 

Thanks.

DAIKI